ビール大手のキリンホールディングス(HD)<
2503>は、協和発酵工業<
4151>を買収することで両社は合意。株式の株式公開買い付け(TOB)などで、協和発酵の発行済み株式の50.1%を取得、連結子会社化する。
来年10月に協和発酵とキリンHDの医薬事業子会社であるキリンファーマと合弁させ、社名を『協和発酵キリン』とする。
10月31日〜12月6日にTOBを実施、協和発酵株約28%を1673億円で取得、さらに来年4月1日、子会社のキリンファーマを株式交換により協和発酵の子会社としたうえで、最終的に合弁で医薬品事業を統合する計画。
協和発酵の株価は1500円に設定されたTOB価格を下回り、下落が続く異例の展開。23日の終値は前日比58円安の1320円。22日午前にキリンホールディングスがTOBを正式発表、2日連続で下がり、TOB価格との差は180円に開いた。
この株価がTOB価格を下回った背景には、TOBと株式交換による買取スキームがる。TOBと株式交換で段階的にキリンホールディングスが協和発酵株の持ち株比率を50%超にするため、実際にTOBで買い取る株式は発行株式のわずか27.95%。そのため、協和発酵株を取得しても、TOBで売れるとは限らない。
さらに、その後、キリンファーマと株式交換で協和発酵側は1億7000万株の新株を発行するため、発行済み株式は現在の44%増。
今、協和発酵の株を取得しても、TOBで売り切れなければ、新株発行により一株あたりの利益は希薄化するのは目に見えている。
そのため、実際の株価がTOB価格を下回っているにも関わらず、売れなかった場合のリスクを考えると手が出し難く、買い意欲が盛り上がらないというのが正直なところ。
今回のTOB、株式交換で3000億円規模の大型M&A(企業買収・合弁)で、外資系の証券会社が関わっている点が興味深い
キリン側にはJPモルガン証券、協和側にはメリルリンチ日本証券がファイナンシャル・アドバイザーとして関わっている。これまで日本の習慣として主力銀行系の証券会社、主幹事である証券会社が関わるのだが、今回は全く違う。
その理由として、これまでの取引実績による信頼性に加え、提案の中身がよく、リスク、メリットなどの詳細な話し合いの中で高く評価されたためという。
確かにJPモルガン、メリルリンチも国内の医薬業界のM&Aでは度々登場し、目立った存在。
これまでのメイン銀行だから、昔からの関係ではなく、実を取る時代。昔ながらの持ちつ持たれつであぐらをかける時代ではないのかもしれない。